よみちにひはくれない

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「老いと演劇」OiBokkeShi第1回公演『よみちにひはくれない』
作・演出:菅原直樹
2015年3月29日14時@岡山県分和気町駅前商店街

  青年団の俳優、菅原直樹くんが岡山県に引っ越して介護士になったのは聞いていた。私にとっては、初演『もう風も吹かない』のキノコ隊員。底なしの優しさと底知れぬ怪しさが共存する、不思議な役者である。昨年は、介護と演劇の相性の良さを実感して始めたという「老いと演劇のワークショップ」に参加し、介護職員としての積み重ねが、彼を演劇人としても大きく成長させていることを目の当たりにした。そんな彼が芝居をやると言う。実在の商店街を舞台にした「認知症徘徊演劇」だと言う。借景芝居を提唱する私としては、これはもう行くしかない。
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 岡山県和気町の駅前。元々は銀行だったという風情のある建物を観光協会が使っていて、そこが集合場所であり、受付である。そうそう、もう壊されてしまったが、青森市本町のみちのく銀行の建物、いいなぁ、いいなぁって思っていたのだったっけ。
 それはともかく、看板がかわいい。
 そして、この駅前の広場。少し早く着いた私は、いきなり準備に来た菅原くんと「おかじい」こと岡田忠雄さんにお会いした場所である。なんだかもう、そこから芝居が始まっているみたいだった。この写真は芝居が始まってからのものだが、本当に二人はこんな感じで立っていたのだ。
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 神崎という役を演じている菅原くんは、おかじいと別れてどんどん歩いていく。観客である我々は、彼の後を追う。さびれた商店街と書くのは抵抗があるのだけれど、かつて繁栄していたであろう、繁栄の名残しかない商店街を歩いていると、私はいったい日本のどこを歩いているのか、いつの時代を歩いているのか、なんだかどんどん迷子になっていく。
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 二十年ぶりに故郷を訪れて町を歩く神崎を追いながら、町を抜け、河川敷に行く。観客が追っているのは、神崎ではなく、神崎が追い求める幻の故郷なのだろうか。この地に思い出のない私が、変わってしまった故郷に対する神崎の寂しさをいつのまにか共有している。
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 欲を言えば、今回のバージョンは「認知症徘徊演劇」よりも「幻のふるさと散策演劇」の様相が濃かった。今、菅原くんが考えていることを、菅原くんとおかじいの二人がいるからこそできる「認知症徘徊演劇」が観たい。うさぎ庵の借景芝居とはひと味もふた味も違った、「老いと演劇」OiBokkeShiならではの世界を観るために、きっと私はまた和気町に行く。


おまけ
圧巻! 神崎は探している黄色い服のおばあさんを見つけ、橋の上まで走っていく。河川敷に残された観客は、演劇体験としてはあり得ないロングショットで二人を見つめる他ない。
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ロビーとなっている中国銀行跡地。奥の金庫、わかりますか?
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商店街のお店が店先に「応援しています!」メッセージボード。今、そこで暮らす人々がいるのだということを暖かく感じさせてくれる。
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雨天中止のこの演劇。私が伺った日の天気予報は、曇りときどき雨。でも、「おかじい」てるてる坊主が、見事に晴れを呼びました。
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おかじいこと岡田忠雄氏とと記念写真。なべげんの宮さんこと宮越昭司と同い年かと。また、お会いしましょう!!! おつかれさまでした。
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by nabegen-usagian | 2015-04-03 14:15 | THEATRE

劇作家・うさぎ庵主宰・渡辺源四郎商店ドラマターグ工藤千夏のブログです。


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